
テレビの時代劇や時代小説の世界を遊ぶTRPG、それが「八百八町浮世草子」です。プレイヤーの皆さんは時代劇のヒーローやヒロイン、あるいはその相棒や仲間たちなどの役どころを楽しみます。
「八百八町浮世草子」 は日本の江戸時代を舞台に設定していますが、それはあくまで時代劇としての江戸です。このゲームはヒストリカル・ゲームではないので、プレイの際も厳密に歴史的事実と時代考証にこだわる必要はありません。(実際にそこを目指してデザインはされていません)ただ、史実や様々な文化の時代考証は皆さんが描く時代劇世界にらしさをもたらします。どういった歴史的事実を取り入れて、このゲームを遊ぶかは皆さんが決めてください。
◆八百八町浮世草子のルールブックはこちらからダウンロードできます。
ゲームコンセプト
「大江戸剣劇TRPG:八百八町浮世草子」は前述のようにTV時代劇の世界を楽しむようにデザインしました。その中でも、私の頭の中にあったのは池波正太郎の「鬼平犯科帳」や「剣客商売」、そのほかには「お奉行もの」というべき「遠山の金さん」や「大岡越前」でしょうか。そういったものを再現することを念頭に置きました。これらの、多くの時代劇の特徴は主役は、物語の主人公であり、腕っぷしもたつ人物であるということです。通常は登場人物の中で、最も腕っぷしが立つ人間は主人公であり、それ以外の人物は主人公より多少は腕が劣ります。しかし、物語の中では情報収集に活躍したり、楽しくコミカルな狂言回し的な役を演じることもあります。
この主人公が絶対的に強いというのが、こうしたTV時代劇の大きな特徴でしょう。この特徴は例えばD20(5E)システムのゲームなどでは、最初にキャラクターレベルを異なるように設定する(例えば主役のキャラクターは最初から5レベルで始める)などという風にイレギュラーなレギュレーションで再現する必要があります。
役挌と役作り点
「八百八町浮世草子」では、最初から各プレーキャラクターは、いわゆる強さをバラバラにする方式を採っています。「八百八町浮世草子」にはキャラクターレベルやクラスはありませんが、代わりに「役挌」というものが設定されています。
これには「主役」「準主役」「脇役」「雑魚」の四種類があります。(このうち「雑魚」はいわゆるやられ役で、NPC専用の役挌です。)プレイヤーキャラクターは、「役作り点」とよばれるキャラクター作成のためのポイントを消費してこの役挌を購入します。当然「主役」が高く、「脇役」が安くなっています。(脇役は0点なので、「役挌」の購入にポイントを割かなければ自動的に「脇役」になります。)
「役挌」の違いによるボーナスのひとつが、戦闘シーンでの行動順です。このゲームでは、戦闘シーンには「役挌」の高いキャラクターから行動できます。したがって「主役」と「脇役」が対峙した場合は自動的に主役が専攻となります。
また、戦闘などで、ちょっとした傷を負うと「脇役」のキャラクターは士気判定(〈忍耐技能〉の判定)を求められますが、「主役」と「準主役」は軽傷を負っても士気判定の必要はありません。
さらに「雑魚」キャラクターは「受け」や「回避」などの防御行動も一切行えません。
活劇点
各「役挌」の特徴はさらに「活劇点」にも反映されます。「活劇点」とは、各キャラクターごとに持っているポイントで、消費することによって判定のサイコロを振りなおしたり、戦闘シーンで追加の行動をしたりできるものです。この「活劇点」のゲーム開始時の所持量と貯めておける限界が「役挌」ごとに異なるのです。また、ゲーム中の「活劇点」の回復機会も「主役」が多く、「脇役」は少なくなっています。
不平等を楽しむ
さて、ここまでの説明で「それじゃあ、皆が同じ役挌でないと不平等だ!」と感じられる人も多いでしょう。このゲーム内の各プレイヤーの平等主義に一石を投じるのが、このゲーム大きなデザインコンセプトのひとつです。この不平等をさらに突き詰めるのが次の「役作り点」の仕組みです。
役作り点
「役挌」の違いによるゲームシステム上の不平等について簡単に書きましたが、「確かに不平等だけども、主役になるためにはたくさんのポイント(役作り点)をつかわなくてはならないのなら、あるていどは バランスが取れるのでは?」という思いが浮かぶ方も多いでしょう。
しかしこのゲームではキャラクター作成に使用する「役作り点」の配布にも工夫をしています。すなわち、「役作り点」は各プレイヤーに与えられるのではなくプレイヤーパーティー全員に対して与えられ、それをプレイヤー間で相談して分配して使うというルールになっているのです。
つまりプレイヤーAには400点を配って強力な主役の剣客キャラをつくってもらって、プレイヤーCには100点で「脇役」の蕎麦屋のおやじを作ってもらっうというようなこともできるのです。この「役作り点」を不平等に分配することはルールでは強制はしていないので、全員がそこそこの強さのキャラクターという「必殺」シリーズのような登場人物の構成も一応可能です。ただ、推奨として「主役」を演じるプレイヤーには350点、「脇役」を演じるプレイヤーには100点などのような基準は設けてあります。
剣劇
登場人物の役どころに焦点をあて、あえて不平等を楽しむというコンセプトに加えて、もう一つの主要なコンセプトが「戦闘シーンを時代劇っぽくする」ということです。多くのファンタジーTRPGが戦闘シーンでは剣を使って殴り合い、互いの体力(ヒットポイント)を削りあうというデザインになっていますが、TV時代劇では、大抵は一撃で決着が付きます。多くの雑魚は主役のただの一太刀で倒れ、敵のボスクラスでも数合の打ち合いで倒されるのです。これは、徐々にヒットポイントが削られるという従来のデザインでは再現できません。
そこで、キャラクターの身体の負傷状態は「軽傷」「重傷」「致命傷」の三段階としてヒットポイント制を採用していません。さらに、「軽傷」は「脇役」には士気判定を要求しますが、「主役」と「準主役」には要求しない設計です。また、「軽傷」は士気判定以外の罰則はなく、翌日には全快します。つまり、「軽傷」は敵の雑魚の士気をくじくための負傷としてデザインしているということです。また、「軽傷」はいくら「軽傷」が累積してもさらに重篤な状態へは移行しないので、「主役」は多少かすり傷(軽傷)を負っても一切行動に影響受けないことになります。
さらに、前述の「活劇点」を消費すると万が一にも重い負傷を負った場合、その負傷の程度を軽くすることができるというルールがあります。したがって「活劇点」さえ残っていればたとえ「致命傷」を負っても「軽傷」に変更することができ、そして「主役」にとって「軽傷」は実質無傷と変わらないという設計になっています。
TV時代劇の剣劇シーンで、もう一つ特徴的なのは「主役」は「雑魚」に取り囲まれながら戦うというものです。
「八百八町浮世草子」の戦闘システムjでは基本的に、ひとりのきゃたくたーは1回の戦闘ラウンドに1回の攻撃と1回の防御(受けや回避)が行えます。したがって、複数の敵に囲まれてしまうと例え相手が「雑魚」だとしても「主役」が攻撃を防ぎきれないということが発生する可能性があります。例えば5人の「雑魚」に「主役」が囲まれると、「主役」が先攻なので先に一人はまず間違いなく倒せますが残りの攻撃のうち、一つしか防げないことになってしまいます。
こうした場合にも「活劇点」が役立ちます。活劇点を1点消費するごとに追加の行動を一つ行えるので、極端な話をすれば5に囲まれても4点の活劇点を消費すれば、一瞬で全員を倒すこともできるのです。また、防御に回せば、全員の攻撃をしのぐこともできるでしょう。
このゲームでは「主役」の強さは絶対ですが、それは「活劇点」の存在に多くが依存します。したがって実際のゲームプレイでは「主役」を演じるプレイヤーは「活劇点」のマネジメントに気を配る必要があります。
「活劇点」による追加の攻撃や追加の防御も「主役」対「脇役」、「一人」対「大勢」を成り立たせるためのルールのひとつですが、その他にもキャラクター個別の「回避値」に関するルールや、選択ルールですが、ひとりのキャラクターに対する同時攻撃に関するルールなどでなるべく時代劇の剣劇シーンを再現できるようにルールを作っています。
ゲームシステム
今まで、ゲームのデザインコンセプトを実現するためのゲームシステムの実装について解説しましたが、ここからは簡単なシステム紹介をしていきます。
能力値
「八百八町浮世草子」には三つの基本的な能力値があります。この能力値も「役作り点」を支払って購入します。
『心』精神力や知性
『技』手先の器用さや身体の敏捷性
『体』身体の筋力や頑健度
能力値で判定する場合は、2D6を振って能力値を加え、GMが指定した目標値以上になれば成功という単純なものです。場合によっては、目標値を大きく超えた場合はより良い結果が生じる場合もあります。また、6の目がでたサイコロは、もう一度振って、結果の出目をさらに加えることができます。サイコロの目が「1」のゾロ目の時は常に失敗します。
またこの判定を行うときにゾロ目が出た場合は「活劇点」を貰える場合もあります。
技能
このゲームには幾つかの「技能」もあります。〈剣術〉や〈弁舌〉などです。「技能」を習得するためにも「役作り点」は必要です。
技能には関連する能力値があり、技能のレベルとその能力値を合計した値(技能実効値)に2D6を加えて、技能の成功は判定します。「6」の目による振り足しや「1」のゾロ目による自動失敗も能力値判定と同じです。
天命点
「活劇点」とは別にプレイヤーたちの扱えるリソースの一つとして「天命点」と呼ばれるポイントもゲームには準備されています。この「天命点」は「活劇点」とは異なり、プレイヤー各員ではなく、プレイヤーパーティ全体にたいして、1セッションに1点が与えられます。この「天命点」はセッションを超えて3点まで蓄積できますが、セッションの開始時に与えられる1点を除いて、セッション中に回復する手段はありません。
「天命点」は「活劇点」と異なり、ゲームマスターが振ったサイコロを振りなおさせることができます。もしくは、ゲーム中にPCが死亡した時、「死んだかに見えたが、実は生きていた」ことにできます。
剣術流派
剣劇の要素の一つとして「剣術流派」のルールがあります。これも「役作り点」を消費して習得するもので、いくつかの歴史上の流派「鹿島新当流」とか「二天一流」とかが準備されているほか、プレイヤーがオリジナルの流派(我流)を作ることもできます。
例えば用意されている流派の中で「薩摩示現流」の使い手の場合は、戦闘ラウンドの最初の一撃ではダメージを決定するサイコロを2個余分に振ることができます。これは「6」の目の追加ダメージも出やすくなるため、極めて殺傷力の高い攻撃になります。
背景世界
ルールブックの後半には、江戸時代と江戸の町についての解説も簡単にではありますが書かれています。歴史の知識を持っている人には不要な情報かも知れませんが、江戸の町と社会の仕組みは、独自にシナリオを作成する一助となるのではないかと思います。
※この「大江戸剣劇TRPG:八百八町浮世草子」のデザインを行っている私は、ずっと関西在住のためこの江戸の町の解説を書きながらも、土地勘が全くないため、もしもお気づきの点があればお教え下されば幸いです。
