はじめに 

 時代劇や時代小説の世界を遊ぶTRPG、それが「八百八町浮世草子」です。プレイヤーの皆さんは時代劇のヒーローやヒロイン、あるいはその相棒や仲間たちなどの役どころを楽しみます。
  「八百八町浮世草子」 は日本の江戸時代を舞台に設定していますが、それはあくまで時代劇としての江戸です。このゲームはヒストリカル・ゲームではないので、プレイの際も厳密に歴史的事実と時代考証にこだわる必要はありません。(実際にそこを目指してデザインはされていません)ただ、史実や様々な文化の時代考証は皆さんが描く時代劇世界にらしさをもたらします。どういった歴史的事実を取り入れて、このゲームを遊ぶかは皆さんが決めてください。
 例えば、江戸時代の将軍、家康に始まり慶喜で終わる歴代の名前が変わっても問題ありませんし、歴史上の人物の生きた年代がズレてもかまわないでしょう。要は皆さんの描く世界の中で辻褄があっていればそれで問題ありません。

このゲームの特徴

 この「八百八町浮世草子」は簡単なシステムのTRPGですが、一つだけ特徴的なルールが有ります。それはキャラクター作成の方法です。キャラクター作成の方法は最近ではよくあるポイントバイ、いわゆる買い物方式ですが、そのキャラクター作成に消費するポイントは各プレイヤーにではなくパーティー全体に与えられます。例えばプレイヤーが4人の場合は1100点がパーティー全体に与えられます。一人頭275点ということになりますが、このゲームはではそういった等分割はお勧めしません。主役は主役の、脇役は脇役としてのロールプレイを楽しむゲームであってほしいと考えています。

【配役の決定】 

 ゲームを始めるに当たって先ずは各ブレイヤーの演じるキャラクターを決めなければなりません。キャラクターは以降のこゲームのルールに従って作ることになりますが、いきなりキャラクターの作成を始める前に、ゲームに参加する全員で相談をするようにしてください。
 まず、既にゲームマスターがシナリオを作っているか、少なくともそのアイデアなどが存在する場合は、ゲームマスターから多少の情報を得てキャラクターを作っていく必要があります。たとえは、剣豪同士の戦いを主とした物語をゲームマスターが用意している場合は、少なくも一人(おそらく主役)は侍である必要があるでしょう。捕り物ストーリーならば奉行所の役人や火付け盗賊改め方が必要になるでしょう。ゲームマスター側がそういった準備をまだしていない場合は、プレイヤーからも遊びたい時代劇世界などをリクエストしたり、遊んでみたいキャラクター像を全員で話し合ったりして、ゲーム用のキャラクターの輪郭を作っておいたほうが実際のキャラクター作成や、ゲームのプレイ自体が円滑におこなえるでしょう。

 役作り点

 このゲームではキャラクターを創るのにサイコロは使いません。その代わり役作り点という点数を使います。
 この役作り点をさながら お金のように消費していきながら様々な能力や技能を買い物していくことでキャラクターを作ります。
 役作り点を消費して買い物しなくてはならない物は以下のものです。

  • 能力値
  • 技能
  • 流派
  • 役格

 それでは自分のキャラクターを創るのにどれぐらいの役作り点が使えるでしょうか?
それはプレイヤーの皆さんの人数と話し合いで決まります。
 このゲームではプレイヤーの皆さんの全員に対して、その合計というかたちで役作り点が与えられます。与えられた点数を皆さんで話し合って自由に分けてキャラクターを作ります。
プレイヤー全員で何点の役作り点が貰えるかは役作り点表に記載されています。
 この数字は標準的なゲームを行うのに適当と思われるものですが、ゲームマスターとプレイヤーの皆さんで相談して、増やしたり減らしても別に構いません。

表-1 役作り点表

プレイヤー人数
役作り点
配役例
1人
350点
主役1人
2人
600点
主役1人と準主役1人
3人
850点
主役1人と準主役2人
4人
1100点
主役2人、準主役1人、脇役1人
5人
1250点
主役2人、準主役1人、脇役2人
6人
1400点
主役2人、準主役1人、脇役3人
以降1人増えるごとに100点を余分に得ることができる。
※配役の例はあくまでも例で、プレイヤー間で相談して自由にきめてもかまいません。

 役格 

 このゲームのキャラクターはプレイヤーキャラクターにしろノンプレイヤーキャラクターにしろ役格というものを持っています。
 役格はゲームを遊ぶに当たってのストーリーへの関わりから、主役準主役脇役の三種類に分けられます。(NPCには雑魚という役格があります)
 この役格はキャラクターの物語を動かす強さを表すのですが他のゲームのキャラクターレベルのように弱いところから始まって徐々に成長し、やがて主役になるというものではありません。 ゲーム開始時から主役のキャラクターは主役ですし、脇役のキャラクターは あくまでも脇役なのです。

 さて、この役格はどのようにして決めるのでしょうか?それは先に述べましたように役作り点による買い物方式です。 役格を買うために必要な役作り点は役格表に記載されています通りに、脇役 0点、準主役 50点、主役 100点です。 つまり、役格買うのに役作り点を消費しなかったならば、そのキャラクターは脇役になるのです。各プレイヤーが担当する役格はあらかじめ役作り点を全員で分配する時に相談して決めておいたほうが良いでしょう。

 ところで役格が違うというのはゲーム上でどの様に影響するのでしょうか?それは後に説明する活劇点の量と使用法、使用制限に影響します。また戦闘のアクションシーンになった時の行動順序にも影響しますが、これらの具体的な説明は後の各項で行います。とにかく同じ能力のキャラクター同士ならば 役格の上の方がかなり強力です。

◆デザイナーのコメント
 このゲームのデザインコンセプトには、プレイヤー間の強さ的な不平等を楽しむということがあります。役作り点をプレイヤー人数で等分にして遊ぶこともできますが、できればしっかり役格を分けてそれぞれのロールプレイを楽しんでください。
 役作り点分配の参考までに、それぞれの役格のキャラクターは、通常、次のような役作り点で創られます。
 主役 350点、準主役 250点、脇役 150点  ( この中には役格を買うための役作り点も含まれています ) 。

表-2 役格表

役格
必要な役作り点
活劇点蓄積限度
活劇点獲得
脇役
0
5
6ゾロ
準主役
50
7
6ゾロ
主役
100
10
5ゾロ、6ゾロ
※活劇点蓄積限度はその役格が蓄積しておける活劇点の限度。
活劇点獲得はゲーム中の行為判定で、この目が出たときに活劇点を1点獲得する。

 能力値の決定 

  すべてのキャラクターは固有の肉体的あるいは精神的特徴を3つの数字で表します。
 この数字を能力値と呼びます。そしてこの能力値も役作り点を消費して買わなければなりません。プレイヤーキャラクターの能力値は、最低が4で最高が10です。

 また各能力値の意味は次のようなものです。

  • 「心 」 知性や精神力を表します。
  • 「技 」 機敏さや器用さを表します。
  • 「体 」 体格や筋力、持久力を表します。

 各能力値を獲得するために必要な役作り点は、能力値・技能レベル決定表に記載されています。

表-3 能力値 技能レベル 決定表

能力値
役作り点
技能レベル
役作り点
0点
2点
12点
6点
27点
12点
44点
20点
64点
30点
86点
42点
10
111点
56点
※役作り点の項目に記載されているのはその能力値や技能レベルを獲得するために必要な役作り点です。たとえば『体』の能力値に8が欲しいととしたならば役作り点を64点使うことになります。

 技能の決定 

 役格と能力値が決まったならば次は技能を決めます。技能は技能一覧表から自由に選択して構いません。それに必要な役作り点は、能力値・技能レベル決定表に示されています。
なお、注意していただきたいのですが、この段階で決定される技能は技能レベルと呼ばれる数値です。実際にゲームを始めたら、この数値に基本となる能力値を加えた技能実効値を用います。
 この時に用いる能力値は技能一覧表に記載されてる基本能力値となります。
ですから、たとえ技能レベルが低くても基本能力値が高ければその技能の成功率は高くなりますし、逆に技能レベルが高ければ能力値が低くても大丈夫です。
 一般に高い技能レベルは多くの経験や厳しい修行の結果を表しますし、高い能力値は生まれながらの天与の才を表しています。

表-4 技能一覧表

技能名
基本能力値
技能名
基本能力値
技能名
基本能力値
剣術
『技』
隠密
『技』
武家社会
『心』
弓術
『技』
運動
『技』
江戸町
『心』
槍術
『体』
知覚
『心』
裏社会
『心』
薙刀術
『体』
走行
『体』
棒術
『技』
弁舌
『心』
手裏剣術
『技』
錠前破り
『技』
賭博
『心』
掏り
『技』
鉄砲術
『技』
偽証
『心』
武家社会
『心』
拳法
『技』
職人技能
さまざま
柔術
『体』
読書き
『心』
芸能技能
さまざま
忍具
『技』
算術
『心』
体さばき
『技』
医術
『心』
手投げ
『体』
蘭学
『心』
馬術
『技』
泳術
『体』
※はじめの九つは武芸技能と呼ばれるもので、この技能レベルが4以上あれば流派の特典をとることができる。
職人技能と芸能技能に関してはゲームマスターと相談して、種類や基本能力値を決めます。

 耐久点、回避値、打撃修正の決定 

 各キャラクターは基本的に「体」の能力値と同じだけの耐久点を持っています。
また余分に5点の役作り点を消費することによって耐久点を1点増やすことができます。 これによって増やすことのできる耐久点は「体」の能力値までです。
つまり最初の耐久点と合わせて「体」の能力値の2倍までが限界ということです。
 キャラクターはゲームの途上で様々な困難から負傷を受けたり、病気にかかったりするでしょう。そのとき受けたダメージは全てこの耐久点から差し引かれていきます。
 そして耐久点が0になったならばキャラクターは死亡します。
 なおゲーム中に耐久点による判定が必要になった時には特別に指示がない限り、この減少した耐久点を用いて判定します。
また耐久点の判定は常に能力値による判定として扱いますので後述の通りサイコロは、三つ振ることができます。

 キャラクターの「技」の能力値に5を加えたものがそのキャラクターの回避値になります。キャラクターが<体さばき>の技能を持っている場合は、回避値にはこの技能レベルを加えることができます。

◆デザイナーのコメント
回避値は重要です。特に主役のキャラクターは剣劇シーンでは複数の敵を同時に相手にしなければならないことが多くあります。そのようなときに回避値が高いと、攻撃を受けたり回避したりに使用する活劇点が少なくて済みます。

 また、キャラクターの「体」の能力値が6以上ある場合は、特定の攻撃手段で相手に与えるダメージが大きくなることがあります。これを追加打撃と呼びます。追加打撃は「体」の能力値によって変わりますので、追加打撃表を参照してそのキャラクターの追加打撃を確認してください。

表-8 追加打撃表

『体』の能力値
追加打撃
4または5
なし
6または7
+1
8または9
+2
10
+3
※ 武器一覧表で体修正の項目が有になっている武器で攻撃を行う場合はこの表の追加打撃が適用されます。

 流派の習得 

 さて時代劇といえばサムライが登場するわけですが、その中でも主人公たちは、大抵一人前の剣士です。
 そこで「八百八町浮世草子」では、流派のルールを定めて一流の剣客達を演じやすくしてあります。
 技能一覧表に記載されてる技能の内、始めの九つは武芸技能と呼び、これらの技能のどれかの技能レベルが4以上ならば、そのキャラクターは流派を名乗ることができます。  流派には既製流派と我流があり、やはり習得するためには規定の役作り点の消費が必要です。
 流派の特徴や詳しい内容は後に該当項目で説明します。有名な剣術の既製流派を名乗るために必要な役作り点は、有名剣術流派表に記載されています。また自分独自の流派や、実在した既製流派以外の流派を望むのなら我流特典表に示されている役作り点を消費して我流を編めばよいでょう。
 各キャラクターが独自に編んだ我流に関しては、プレイヤーが自由に命名してもかまいません。また、有名剣術流派表にない実在した流派を習得する場合は、ゲームマスターと相談して行うのが良いでしょう。

表-5 有名剣術流派表

流派名
役作り点
鹿島神当流
20点
薩摩示現流
30点
小野派一刀流
30点
柳生新陰流
40点
林崎夢想流
20点
二天一流
50点

表-6 我流特典表

役作り点
戦闘時の特典
-10点
自身で受けを行う際に難易度が+2される。
10点
居あい抜き。抜刀していなくてもそのまま攻撃、および受けができる。
10点
戦闘ラウンドの初太刀のみ打撃力が2倍になる。
15点
戦闘ラウンドの初太刀のみ打撃力が3倍になる。
15点
打撃判定のサイコロの目が3でも致命的命中になる。
15点
自身の行う攻撃の難易度が-2される。
15点
自身の行う受けの難易度が-2される。
15点
相手の行う「受け」もしくは「体さばき」の難易度が+2される。
15点
たとえ攻撃を受けられても打撃を出し、相手の「体」の能力値を上回った分だけダメージを与える。
15点
例え攻撃を受けられても打撃を出し、致命的命中になれば受けた武器を破壊する。

 姓名、身分、持ち物、所持金 

 ここまで来ればキャラクターの数量的な能力はきまりました。続いてキャラクターの名前や職業などを決めていきます。
 まず姓名ですが、江戸時代に苗字を名乗れたのは、ご存知のごとく特権階級たる武士や貴族だけでした。そのことを念頭に置いて名前は決めなければなりません。農民や町人は名前だけです。
 また、武士は名字と名前の間に役職名や幼名、通称などが入り、ふつうはこの役職名で呼ばれました。本当の名前を呼ぶのは失礼に当たるという考えがありました。たとえば大岡越前守忠助の場合は、通常の武家社会では越前守殿(えちぜんのかみどの)と呼ばれ、町人たちからは御奉行様とよばれました。

 遊郭の遊女は本名とは違う源氏名を名乗りました。源氏名は通常は源氏物語の登場人物からとって使われるものでしたが、江戸時代には源氏物語風の雅な名前が使われるようにもなりました。また、深川の芸者は源氏名として源氏物語とはまったく関係ない男性名をつける習慣がありました。
梅吉とか三太とかで「梅吉ねえさん」「三太ねえさん」などと呼ばれました。

 キャラクターの職業に関しましては、次章を参考に決定してください。職業の選択はシナリオに最も密接に関わる可能性が高いので、ゲームマスターと相談するのが良いでしょう。

 キャラクターの所持品に関しては特にルールに定めることはしません。
やはりゲームマスターとプレイヤーで相談して決めてください。ただ時代劇というものは一般に数々の特殊装備を次々に繰り出して事件を解決していくというような代物ではありませんから、もし貴方がゲームマスタなら余りにに沢山の特殊装備は ブレイヤーがよほどそれを所持している理由を うまく説明できない以上は、許可するべきではないでしょう。
 また、たとえ説明できたとしてもそれがあまりにシナリオにそぐわないものならば、許可してはいけません。

 所持金に関しては、基本的には考えずに身分相応の暮らしぶりならば問題なしとして自由に買い物や飲み食いできるとしても良いでしょう。所持金をしっかり管理するのであれば、最初の所持金は以下のようにすれば良いでしょう。

  • キャラクターが普通の町人、もしくは浪人の場合は、サイコロを一つ振りも出た目に百文を掛けあわせます。
  • 下級武士の場合、サイコロを二つ振って出目に百文を掛けあわせます。
  • 大店の商人や旗本の場合、サイコロを一つ振っただけの小判を持っていることにします。

決定された所持金というのは、キャラクターの全財産というのではなく、普段身につけて持ち歩いている金額です。従って先の所持品の決定時に持っていることにしたものをこの所持金で買わなければならないわけではありません。

 ここまででキャラクターは、ほぼ完成しているはずです。後は細やかな性格や癖などを考えれば完成です。

◆キャラクター作成の例
それではキャラクター作成の例を示してみましょう。
ゲームに参加するのは全部で4人として、一人はゲームマスター、残り三人がプレイヤーとなります。 三人のプレイヤーの場合に与えられる役作り点は、850点とします。まず最初に三人のプレイヤーは同士で話しあって、役作り点を分配しなければなりません。
 この時に各プレイヤーの役格も決定しておけば簡単です。
 それではとりあえず役作り点を 280点獲得して準主役のキャラクターを創ることにしましょう。
 まず役格ですが これは準主役ですので、役作り点を50点消費します。これで残りの役作り点は 230点です。続いて能力値を決定します。
能力値は、「心 」 「技 」 「 体」の三つですが、これをそれぞれ 7、7、6、とします。 これに必要な役作り点は、44点、44点、27点です。これらを差し引くと、残りの役作り点は 115点です。
 次は技能を習得します  まず剣術技能を技能レベル5で獲得します。剣術の基本能力値は「技 」ですから、剣術の技能実効値は12となります。
 これには役作り点を30点消費します。その他の技能も順次、以下のようにして習得していきます。
 拳法3、柔術3、体さばき3、隠密2、運動2、知覚4、読み書き2、武家社会2、以上で役作り点の残りは35点になります。
 さて剣術の技能レベルが4以上ありますので流派を名乗ることができます。既製流派を習得してもよいのですが、我流を編むことにします。我流の特典の中から、相手の受け体さばきの難易度が2上がると、居合い抜きを習得することにします。これには役作り点を25点消費します。したがって役作り点の残りは10点になります。 これはすべて耐久点に使用するとして、耐久点は「体 」に2を加えて8になります。回避値は「技」の7に5を加え、さらに<体さばき>技能レベルの3を加えて15になります。また「体」の能力値が6あるので追加打撃は+1になります。
 これでひとりのキャラクターの一応の完成です。

 キャラクターシート

キャラクターで出来上がったキャラクターシートをダウンロードして記入してください。

キャラクターシート(PDF版)

 【人別帳】

 前章では、八百八町浮世草子のキャラクターの作成方法を書いてきましたが、この章では、「八百八町浮世草子」のキャラクターを作るにあたって、登場人物のヒントになるような職業?を紹介します。

 町奉行所の人々

 町奉行所は江戸の町の治安を預かる、今の警察と裁判所をあわせたような機能にさらに戸籍調査や、商業の監督など市役所のような仕事もしていました。江戸には、北町奉行所と南町奉行所がありました。(時期によっては1つだけのときも、あるいは三つあったときもあります)

町奉行

 町奉行は奉行所の長官で旗本が任命されました。その手当ては3000石といわれています。(年収3億円)
 町奉行は以下の同心や与力と違い世襲制ではありませんでしたので、その任期は大体5年程度でした。

 町奉行のキャラクターは大身の旗本なので、経済的には恵まれています。本来の町奉行の仕事は基本的にデスクワークで、江戸城への登城が必要でした。(老中などとの打ち合わせを江戸城内で行いました。)町奉行のキャラクターは武家社会にと江戸町に関してはある程度精通しているかもしれません。
<武家社会><江戸町>また主役として町奉行を扱う場合は高めの<剣術>などがあった方が良いかもしれません。

同心

同心は奉行所に勤める幕府の下級役人で普通は御家人す。
 町奉行所の同心は、まるで刑事ドラマの刑事たちのように事件を捜査し、下手人(犯人)を逮捕します。幕府の下級役人である彼らは奉行所の役宅(社宅?)に住んでいることがほとんどです。
 同心は下級の御家人なので薄給でした。現在の貨幣に換算すると月収15万円くらいでしょう。同心のキャラクターは<江戸町>や<知覚>などが高い可能性があります。

与力

 与力とはいづれかの長に仕えて支える、いわば参謀の様な存在ですがここでは町奉行所の与力として使います。町奉行所の与力も御家人であることが一般でしたが、同心よりも高禄(高給)でした。100石~200国どりくらいでしょうか。(現代の月収だと80万円~150万円程度でしょうか)また与力は同心と違い騎馬が許されました。捕り物の場面などでは騎馬の与力が徒歩の同心を指揮して下手人(犯人)を取り押さえたりなどということもありました。
 与力のキャラクターは、同心たちの監督、指揮を行うことが主で、収入もそれなりにあります。技能としては、<武家社会><江戸町><馬術><弁舌>などでしょうか。

目明し

 目明しは所謂十手もちで、町奉行所の配下で江戸の町の治安維持に協力している町人です。十手を預かって、事件の捜査や治安維持活動を行いますが、その手当ては、ほぼ無給か、ごく僅かで、いわば町人の中での名誉職でした。
 「~親分」と呼ばれる目明しが主人公はかつてのテレビ時代劇では人気のヒーロー像でした。目明しのキャラクターに向いている技能は<江戸町><知覚><隠密>などでしょうか?

 市井の人々

町に住む人々、所謂町人は何かの職人か、人夫、商人が大半でした。中には武士の身でありながら仕える先のない浪人や、無役の御家人など、生活に困窮する人々も多くいました。

 剣客

剣客は、職業というよりも生き様です。剣の道に生きるサムライが剣客です。何処かの藩に仕える者もいましたが、町で道場を開いたり、あるいは単に浪々の身をもてあます者もいました。ここで紹介する剣客は、浪々の身の剣客です。
 剣客のキャラクターの技能は何を置いても<剣術>です。最低でも剣術を4レベル以上持っているべきでしょう。それ以外の技能はそのキャラクターの実際の職業、身分で大きく変わるでしょう。

 医者

江戸の医師は、基本的には漢方医ですが、怪我などについては縫合などの外科的手段を用いました。町医者や幕府や藩に仕える御殿医と町医者がいました。医者のキャラクターは<医術>や<読み書き>、ときには<蘭学>などを修めているべきでしょう。

 芸者

 芸者は踊りや三味線、その他のお座敷芸で客をもてなすことを生業とした女性です。表向きは性的サービスは行わないことになっていますが、その実はそういったことに身を投じる者は多く、そのことが理由で遊女とは確執があることもありました。
 芸者のキャラクターは<芸能>技能の<踊り><三味線>などや情報通としての<江戸町>などをもっていることでしょう。

 火消し

 火消しには大名火消し、定火消し、町火消しがありますが、火消しと言ってすぐにイメージするのはイロハの組に分かれた町火消しでしょう。大名火消しは各大名の藩邸と江戸城を火災から守るのがその役目です。定火消は旗本に与えられた役で、いわば江戸の町の消防署のような働きでした。町火消しは町奉行の配下にはありましたが、手弁当の自治組織で、定火消しなどでは手が回らない町家の消防に活躍しました。「~長屋」や「~屋」から出火すれば町火消しが活躍することになります。また、町火消しはあくまでも無給の自治活動なので、所属する者たちはそれぞれ正業を持っているのが普通でした。
 町火消しのキャラクターは、その本業として技能に加えて<運動>や<江戸町>の技能を持っているでしょう。

 辻売り

 いわゆる露天商が辻売りです。大きな商店は立派な店舗を構えていますが、その日その日の買い物(野菜や魚など)は露天や天秤棒を担いだ商人から購うのがふつうでした。辻売りはそれらの商売をする人々です。また、いわゆる屋台もこれに含まれるでしょう。江戸には蕎麦や寿司の屋台がたくさん出ていたようです。
 辻売りのキャラクターは<江戸町><弁舌>などの技能を持っていることが多いでしょう。

 義賊

 義賊は大きな商家や武家屋敷などを狙う窃盗犯で、盗んだ金品は貧しい人々にわけあたえます。公儀からみればただの窃盗犯ですが、庶民からは一種のヒーローのような存在です。
 義賊のキャラクターは<江戸町><運動><隠密>などの技能を持っているでしょう。

 浪人

 侍の身分を持ちながら、仕官先がない(仕事がない)者が浪人です。浪人は何らかの理由で主家を出奔したり、主家自身が改易(取り潰し)にあったりした場合や、もともと浪人の子息として生まれる場合があります。
 浪人は普通非常に生活に困窮しており、何らかの生業を持っているものです。テレビ時代劇でよく見かけるような「傘張り」や「寺子屋」の先生、などがその代表例です。多くの場合はその妻が生活を支えていることがありました。
 浪人は、何らかの生業にかかわる技能を持っていることでしょう。

 【技能】

さてこの章ではキャラクターの習得している技能について書き進めていきましょう。

 「剣術」「槍術」「薙刀術」「棒術」
これらの技能は武芸技能の一種類です。前述のようにこれらの技能が4以上であれば流派を名乗れます。これらの技能は その対応した武器を使用した攻撃 及び受けの成功の判定に使われます。またこれらの技能は対応した武器の鑑定などにも使えます。

 「弓術」「手裏剣術」「鉄砲術」
これらの技能も武芸技能ですが飛び道具を操る技能のために受けに使用することはできません。
これらの技能は対応した武器の鑑定、加えてメンテナンスの技能をも表しているのです。これらの技能が4以上であれば、鉄砲の弾や手裏剣を鋳掛で製造することができます。

 「拳法」
この技能は素手での戦い(拳撃や蹴りでの攻撃)にもちいます。これらの攻撃が命中したときにはダメージに拳法の技能レベルの半分(端数切捨て)が加えられます。

 「柔術」
素手での戦いで、相手と組み合っての攻防の技術です。関節技や投げ技などの判定に使います。

 「忍具」
この技能は忍びの者たちが使う特殊な器具の使用技術を表します。主に忍具には次のようなものがあります。

  • クナイ 穴を掘ったり物を切断したりに使えます。また棒手裏剣のように投げたり、手に持ってナイフのように武器にしたりも出来ます。
  • マキビシ 地面に撒いて敵の足を止めたりします。まれに毒が塗られていることもあります。
  • シコロ これはクナイの幅を少し広くしてノコギリのような刃をつけたものです。木材などの切断に使用します。
  • カギナワ 麻縄の片方の先端に鉤をつけたものです。麻縄には一緒に髪の毛が捻り混ぜられている場合が多いようです。高所などに上る際の手掛かりにしようします。
  • テカギ 腕から掌または手の甲に着用して登攀時の手掛かりにしたり、格闘時の武器にしたりします。

「 体さばき 」
体を素早く動かしたり柔軟に動かして主に敵の攻撃を回避する技能。この技能の高いキャラクターは、敵の刃を紙一重でかわしたり素早く相手の懐に踏み込んだりできます。また攻撃を受ける時には、この 「体さばき」+5が回避値となり
相手の攻撃命中判定の最低難易度になります。
「体さばき」によって攻撃を回避した場合は、敵の刃はまったく触れなかったことになります。これは相手の刃に毒が塗られた場合、非常に重要です。

「 手投げ 」
正式な投げる武器 ( 手裏剣や小柄 )以外を投げる技能です。技能ロールの結果は投げた距離や正確さを表します。原則としてキャラクターは、小石程度のものを 「体」の能力値の3倍( 単位は間 ) まで投げることができます。
この倍数は 「手投げ」の技能レベルのぶんだけ増えます。
例、「体」が 6で、「手投げ」の技能レベルが 2、従って技能実効値が 8というキャラクターの場合は、小石程度のものならば 6の5倍で 30間( 約55メートル ) 飛ぶことになります。

「 馬術 」
キャラクターが馬に乗って何かする時に必要な技能です。馬に乗ったまま攻撃をする場合は、攻撃の命中ロールと同時に「馬術」のロールも必要です。この馬術のロールは難易度 15で行いますが、もしも馬が戦闘用に訓練されていないものでしたら、難易度は格段に上昇するでしょう。
 また馬に乗ったら 追跡やチェイスを行う時にもこの技能のロールが必要となります。こういった場合は追う側と終われる側の対抗ロールで解決していくのが良いでしょう。

「 泳術 」
この技能があれば甲冑を着たままでも泳ぐことが出来ます。普通、甲冑を着たまま泳ぐ場合は立ち泳ぎになります。この技能を持っていないキャラクターは ほとんど泳げません。

「 隠密 」
物陰にそっと隠れたり、忍び足で歩いたりする技能です。この 「隠密」技能を使用して行動しているキャラクターに気付くには、「知覚」技能で 隠密技能との対抗ロールに勝たなければなりません。また誰かを密かに尾行する場合は、 隠密」と 「知覚」の両方の技能ロールが必要です。

「 運動 」
体を使った基本的行動である 跳躍や登○などの能力を表しています。またある種のバランス感覚なども表していますので、キャラクターが武家屋敷の土堀の上を走ったりする場合にもこの技能ロールを行っても構いません。

「 知覚 」
微かな音を聞きつけたり 何かを発見したりする技能です。この 「知覚」の技能レベルが 4以上あれば気配程度のものもわかります。( 奇襲されにくくにるでしょう ) 

「 走行 」
走る技能です 主にチェイスの時に使うでしょう。これも一般には対抗ロールで使用します。速く走ることと、長く走ることの両方の能力を表しています。走行の技能実効値(能力値+レベル)が10以上あると、戦闘ラウンドに1回の移動できる距離が六間から七間にのびます。

「 錠前破り 」
土蔵などの錠前の鍵を開ける技能です。特殊な道具が必要です。時間が十分にあるならば蝋型を取ってから開けることもあります。この場合、「錠前破り」の技能が必要なのは、蝋型を取るときと、その型から合鍵を造るときです。いったん鍵が出来てしまったならばそれを用いての開錠には 特に技能は必要ありません
開錠の難易度はその鍵によります。

「 掏り 」
他人の懐から気づかれずに何かを盗む技能です。掏られたことに気づくには、「掏り」ロールの結果を難易度にして「知覚」ロールに成功しなければなりません。掏る側が 「掏り」ロールに失敗した場合は、盗むことができなかったと
いうことになります。この場合も失敗した結果を難易度にして、「知覚」ロールに成功すれば掏られそうになったことに気づきます。

「 偽証 」
この技能は いかに上手に嘘をつくかということを表す技能です。技能の高さは 嘘自体の整合性と 喋る言葉使いや態度に影響します。この嘘に気づくには、「偽証」のロール結果を難易度にして「知覚」ロールに成功しなければなりません。また嘘に理論的な矛盾がある場合、それに気づくために「心」ロールを行うのも良いでしょう。

■デザイナーのコメント
 もしもプレイヤーが、ノンプレイキャラクターの嘘の理論的矛盾に気づいたならば、ロールなしで そのプレイヤーキャラクターが気づいたことにしてもいいでしょう。そのほうがプレイヤーも爽快感があるはずです 。

「 読み書き 」
 江戸時代には今と違って文盲の人がたくさんいました。読み書きは 技能を持っていない人は基本的に文盲と考えて下さい。( ただし自分の名前ぐらいはわかります ) 技能レベルが 1のキャラクターは カナ文字だけしか読み書きできません。2以上あれば漢字混じりの文書も読書きできます。4以上あれば漢文も少しは出来ます。
 単に読み書きといえば日本語と漢文を表しますが、中にはオランダ語などの 西洋の言葉の読み書きが出来るキャラクターもいるでしょう。こういった外国語の読み書きは、技能レベルが 4以上あれば ある程度の会話もできます。

「 算術 」
いわゆる数学能力です。基本的な計算のほかに帳簿管理の能力も含んでいます
大きな商店の主人や番頭などには是非とも必要な技能でしょう。

「 医者 」
病気を医薬を用いて治療したり、外傷の手当てをしたりの両方の技術を表しています。基本的には漢方医ですが、中には進んだ西洋医学を習得している場合もあります。次に説明する「簡字」も習得している場合は、西洋医術と考えてもよいでしょう。
 外傷を受けた時の応急処置にもぜひ欲しい技能です。

「 蘭学」
最先端の西洋の科学の知識です。この技能を習得できるのは、「読み書き」で西洋の言葉を習得しているキャラクターだけです。
基本、「蘭学」の技能レベルは 読み書きの技能レベルを越えてはいけません。但し読書きの技能レベルが4以上あれば「蘭学」は自由に習得できます。

「 武家社会 」
この技能は江戸の中心である「武家社会」の現状についての知識を表しています。それは幕府の機構から 各大名家の お家事情までも含んでいます。またこの技能を持っているキャラクターが 武士以外である場合、武士の知り合いもきっといることでしょう。

「 江戸町 」
この技能は、先の「武家社会」の町人版のようなもので、江戸の町の町人社会の雑事に関する知識を表しています。また大きな商家の事情などにも通じています。ゲームの舞台が大坂なら当然ながら大坂の武家社会についての知識になります。別の地域にあっても武家社会の一般的な知識としては使うことができます。

「 裏社会 」
博徒や盗賊といった裏家業の世界に関する知識です。この技能レベルが高いキャラクターは、自身が裏社会の人間であるか、あるいはそういった人間を知り合いに持っているかでしょう。

「 弁舌 」
言葉巧みに喋る能力です。 複雑な事がらを上手く説明したり、誰かを説得したり、理論的に討論したりする時に必要です。この能力を持っているキャラクターが偽証する場合は、嘘を見破る難易度が、「弁舌」の技能レベルの半分だけ上昇します。

「 賭博 」
サイコロ賭博やカルタでの作戦と賭場での慣習に関する知識です。この技能が高いからといって、すべてを偶然に左右されるようなギャンブルに、勝てるわけではありません。ただ常に冷静に振舞えますし ( 大負けすることが少ない ) 、もし誰かがイカサマをしたならば見破ることも出来ます。

「 職人技能 」
この技能は いわゆる職人の本職を表す技能です。この技能を習得する際には、どういった職人技能を習得するのかが、明確にされなければなりません。
 例えば、「鋳物」ですとか 「大工」ですとか 「料理」という風です。職人技能レベルが、4以上あれば一人前の親方として仕事できます。

「 芸能技能 」
「職人技能」と同じように、実際の芸能を決定しなければなりません。例えば、「義太夫」ですとか 「茶の湯」ですとか 「謡曲」という風です。やはり4以上あればある程度の文化人です。

 技能レベルと技能実効値

 ここでもう一度、技能レベルと技能実効値の違いについて説明しましょう。まず技能レベルというのは その技能に対してどれだけ造詣が深いか?経験があるかということを表しています。技能実効値というのは その技能の表す行為をいかに良くこなすか
ということを表しています。そしてこの二つの間にあるのが天分とでもいうべき基本能力値です。たとえば 「錠前破り」の技能について説明しましょう。まず技能レベルというのは、錠前を観察して その構造を知ったり、あるいは開け方についての経験則を立てたりする能力です。
実際に錠前を開けるとなると それに加えて器用な手先が必要でしょう。それが基本能力値の「技」になるのです。そこで実際に錠前が開くかどうかの判定には、技能レベルと「技」の合計である技能実効値の判定になるのです。

 技能ロール

 技能が成功したかどうかの判定には、技能実効値のロールが行われるのですが、その判定にはサイコロを三つ振って中から自由に二つを選ぶことができます。 これが技能の何よりの利点です。
たいていの行為は技能を持っていなくても基本能力値だけで判定できますが、その場合初めから二つしかサイコロを振れません。

 【剣術流派】

技能一覧表に記載されている技能のうち、最初の九つは武芸技能と呼ばれます。 そしてキャラクターは何らかの武芸技能の技能レベルが4以上あれば剣術流派を名乗れます。技能レベルが4に足りなくても名乗っても構いませんが、その場合はまったく名前のみで実際の流派の特典を持つことは出来ません。正式に流派を名乗ることにしたキャラクターは、既製流派を名乗るか、我流を編むのかを決定しなくてはなりません。既製流派を編むのならば「有名剣術流派表」から選びます。我流を編む場合は「我流特典表」から 役作り点の許す範囲で特典を選んで自由に命名した流派を名乗ってもかまいません。

 有名剣術流派

既製流派である有名剣術流派には六つの流派があります。

■ゲームデザイナーからの提言
ゲームマスターは「有名剣術流派表」と「我流特典表」を参考にして他の既製流派も造ってみてください。特にゲームに含まれている既製流派は、ほぼ江戸中期までのものですので幕末を舞台に選ぶならば、ぜひとも天然理心流や北辰一刀流が欲しいところでしょう。

鹿島神当流
 千年以上も昔から鹿島神宮に伝わる「鹿島の太刀」をもとに流祖である塚原卜伝が編み出した剣術です。戦国期に編み出された剣術ですので甲冑を着た状態での斬撃に威力を発揮します。特典は打撃判定での、6面体サイコロの目が6だけではなく3でも致命的命中が発生します。もし相手が甲冑を身に着けていたとしても その防御点を半分に考えることができます。また自分が甲冑を着ても「技」の能力値の減少が1少なくて済みます。
役作り点は 20点必要です。

薩摩示現流
 天正十七年 ( 1589 ) に薩摩の国の東郷重位が興した流派で江戸時代を通して御止め流として門外不出の流派でした。従ってゲームに登場するならば、薩摩藩士か薩摩の浪人になります。
その特徴は何といっても超強力な斬撃にあったようです。幕末に薩摩藩士たちと戦うことになった新撰組の近藤勇が、「薩人の初太刀だけは何としてもはずすことだ」と、隊士たちに命じていたそうです。たとえ刀で受けたとしても あまりに強力な斬撃ゆえに受けた己の刀の鍔を、額にめりこませて殺されてしまったそうです。
 この流派の特典は次のようなものです。
戦闘ラウンドの最初の命中判定で命中したら打撃力は三倍になります。
これは通常どおりに打撃を求めた結果に3をかけてください。
また攻撃が受けられても打撃が相手の「体」の能力値を上回った分に関しては、直接に与えることができます。
この最初の一太刀は、よけるのが難しく 受けと体さばきの難易度は2上昇します。
示現流では攻撃を最優先にしていますので、反面防御が少し手薄になります。
示現流の使い手が受けを行う場合は、難易度が2だけ大きくなります。
薩摩示現流を習得するためには、役作り点が 30点必要です。

小野派一刀流
 小野派一刀流は一刀流の流祖である伊藤一刀斎景久の弟子である小野次郎右衛門忠明による流派です。その理台の基本は滑らかな足はこびによる後の先の動きです。相手に打ち込まれた時に下がったり避けたりせずに、われから懐に飛び込み、相手の間合いをはずし、相手の剣を死に太刀として自分の太刀を生かし斬るというものです。
 この流派の特典は、相手の攻撃を受け流した直後に反撃する場合は相手はこちらの反撃を受け流す難易度が 2高くなることと、活劇点の余分な消費なしに、1戦闘ラウンドに一回余分に攻撃もしくは受けができるということです。
小野派一刀流を習得するためには、役作り点が 30点必要です。

柳生新陰流
 剣聖と呼ばれる上泉伊勢守より指南を受けた柳生石舟斎が流祖で徳川将軍家にも受け入れられました。
新陰流の特徴は、相手の出方に対して非常に柔軟な戦術をとるということでしょう。 すなわち活人剣というものです。相手を動かし、その動きにつれて我も動き隙に乗して斬るというものです。
 柳生新陰流の特典は、自身の行う攻撃 、受け、 体さばきのすべての難易度が 2下がるというものです。
柳生新陰流を習得するためには、役作り点が 40点必要です。

林崎夢想流
 居合術の原型であり林崎甚助重信が流祖です。特徴は何と言っても その電光石火の抜き打ちでしょう。また林崎甚助重信は通常よりも長めの刀を使っていたようです。
この流派の特典は、刀を抜いていなくてもすぐに攻撃状態に入れるということと、この抜き打ちの一撃に限っては相手が受け もしくは体さばきでかわす難易度が2だけ上昇するというものです。
林崎夢想流を習得するためには、役作り点が 20点必要です。

二天一流
 宮本武蔵が流祖です。
二刀流として有名なように大小の刀を同時に使うのが特徴です。両手に刀を持った場合、それぞれの刀で一回の攻撃と一回の受けができます。また活劇点を消費して追加の行動をする場合、1点の消費で両手の武器が一回ずつ使用できるようになります。
二天一流を習得するためには、役作り点が 50点必要です。

 我流

 武芸技能の技能レベルが4以上あれば、流派を習得出来るわけですがその中でも既製流派を習得せずに我流を習得することもできます。我流を習得するためには 「我流特典表」から、いくつかの特典を選びだして必要なだけ役作り点を消費すれば良いのです。
 ただし同じ特典を重ねて採ることはできませんし、役作り点を増やす効果のある不利な特典 ( 役作り点の消費がマイナスの数値 ) で得た余分な役作り点は、我流特典の習得以外には使用できません。
また、すでに既製剣術流派を習得していても、更に我流特典を習得して特典を増やしても構いません。
 この場合も既製流派と我流の特典が重複しないようにしてください。

 【行為判定】

 ゲームを通じてキャラクターたちは様々な危難に遭遇するでしょうし、それをまた様々な行動や機知で乗り越えていくでしょう。こうしたキャラクター達の行動の判定方法がこれから述べていく行為判定のルールです。
 それではまず、どういったときに行為判定が必要なのでしょうか?それは行う前から結果がわかっているかどうかという点で決まります。例えば、手裏剣を投げて小さな的に命中させるという行為です。手裏剣を命中させるには、手裏剣の技量の高さも関係しますが、運の要素も含まれます。こういった実際に行為してみるまでは結果のわからない場合は行為判定が必要なのです。それでは先ほどの行為で手裏剣を投げるだけならばどうでしょうか?目標に命中させる必要も無く、所定の距離まで飛ばす必要もないならば、まず手が不自由でもない限り絶対に成功するでしょう。こういった結果のわかっている行為は行為判定の対象になりません。またゲームマスターはたとえ結果のわからない行為でも必要を感じなければ行為判定を行う必要はありません。

 では実際に行為判定を行う方法はどういったものでしょうか?
 まず行為判定を行うならばゲームマスターは、それがキャラクターのどんな種類の能力と関係があるのかを決定しなければいけません。例えばあるキャラクターが賊に追われて逃げている最中に用水路を飛び越さなければならなかったとします。この場合ゲームマスターはキャラクターの持っている「運動」の技能を使うことにするでしょう。 もしキャラクターが「運動」を持っていなかったとしたら「技」の能力値を使用することになるでしょう。それは「技」の能力値がキャラクターの持つ瞬発力やバランス感覚を表しているからです。さて使用する技能もしくは能力値が決まりましたら、次はその行為がどれくらい難しいかを決定しなければなりません。これももちろんゲームマスターの仕事でその時の状況をよく考えて決めてください。先の例であげるのならば周りは明るいのか?キャラクターは用水路の存在をあらかじめ知っていたのか ?用水路の幅は広いのか?というようなことを考慮した上で難しさを決定すれば良いでしょう。この難しさのことを難易度と呼びます。そしてサイコロを振りその出目に先ほどの 技能実効値又は能力値を加えて難易度以上になれば行為は成功したことになります。またこの時には難易度を余分に上回ったほど結果は良かったことになります。この難易度を上回った数値を成功度と呼びます。従って難易度ギリギリで成功した行為の成功度は0です。また能力値や技能実効値にサイコロの目を加えたもの達成値と呼びます。

 能力値ロール

 行為判定のうち最も基本となるのが能力値ロールです。キャラクターが行うのに必要な技能を持っていない時にこの能力値ロールを行います。
 能力値ロールではサイコロを二つ振り、その出目に能力値を加えます。これが難易度以上ならば成功というわけです。能力値ロールでは通常はサイコロを二つだけ振るのですが、例外としてキャラクターの行為がゲームに用意されてる どの技能にも当たらない場合(例えば 板戸を蹴破る・体の能力値ロール とか、
(以前に聞いたことを思い出す・心の能力値ロール など)や、初めからルール上で能力値ロールを要求している場合、 ( 負傷の回復判定ロール ) は、サイコロを三つ振って、その中で高い目の二つのサイコロの合計を使うことができます。

 技能ロール

キャラクターが行おうとしている行為に対して適切な技能を持っている場合は技能ロールを行います。方法は能力値ロールと同じですがサイコロは常に三つ振って、そのうちの高い二つの合計を使います。
 技能ロールの代替として能力値ロールを行う場合は、使用する能力値はその技能の基本能力値(技能一覧表を参照)を使用します。またこの場合にはサイコロは二つしか振れず、その合計と能力値を使用することになります。 

 難易度

 さて、キャラクターの行為の難しさが難易度と呼ばれる数値なのですが、その設定はどれぐらいが適当なのでしょうか?ルールで特に難易度が設定されていない行為判定では、15を難易度の基準にします。ゲームマスターはこれに対して行為の難しさや条件を踏まえた上で修正を加えていけばよいでしょう。一般的に言って15よりも高い難易度はその道の専門家が行うべき行為であり、15よりも低い難易度は素人にも可能性のある行為といえます。普通、難易度は10から20のあいだくらいの値が適当です。

 対抗ロール

行為判定の特殊な形式として対抗ロールというものがあります。これは例えばキャラクター同士が腕相撲をするといった場合のように、どちらかが勝つ、もしくは成功するというような行為判定に使用します。こういたった対抗ロールには普通、難易度は設定しません。単純にサイコロの目と能力値(もしくは技能実効値)の合計が大きい方が、勝つか成功します。
 対抗ロールでもお互いに同条件でない場合や、何らかの修正が必要な場合は難易度を設定し、互いの成功度を比べることにしてもかまいません。また、難易度を設定した場合はその難易度を達成できなければ、対抗ロールには勝っても、結局行為は成功しないということもあります。

 【活劇点】

時代劇の登場人物たちは時として超人的な力を発揮したり、非常な幸運に恵まれたりします。とくに物語の主役クラスになると剣劇シーンでは鬼神のように活躍します。このことを再現するために「八百八町浮世草子」には活劇点というものがあります。活劇点はゲーム中に増えたり減ったりもしますが例えゼロになっても、特に不利なことが発生するわけではありません。ゲーム開始時に各キャラクターが持っている活劇点は役格によって決まっています。表‐2<役格表>の活劇点蓄積限度よりも2少ないだけの活劇点でスタートします。つまり、主役は8、準主役は5、脇役は3で始めるのです。この最初の活劇点を初期活劇点と呼びます。

 活劇点の効果

プレイヤーはいつでも活劇点を消費することが出来ます。活劇点を使って行えることは次のようなことです。

  • 失敗した行為判定を成功させる。この場合は3点消費しなければなりません。また、これは僅かでも成功の可能性のあった行為にたいして行える選択で、最初から成功する可能性のない行為には行えません。
  • 失敗した行為判定をもう一度再挑戦(サイコロを振りなおす)する。これは失敗したサイコロの目をなかったことにしてサイコロを振りなおすもので1点だけ活劇点を消費します。
  • 行為判定を行わずに自動的に成功したことにする。この選択は僅かでも成功の可能性のある行為に対してのみとることが出来ます。活劇点は2点消費します。
  • 戦闘ラウンド中に余分な行動を追加する。これは1点だけ活劇点を消費します。これによって1つ余分に行動できるようになります。
  • 都合の良い偶然の事態が発生する。これは偶然の内容についてゲームマスターと相談し、必要な活劇点もゲームマスターが裁定します。
  • 実は生きていた。戦闘などで耐久点がゼロ以下になったとき、通常そのキャラクターは死亡しますが、活劇点を2点使用することで、死んだように見えていて実は生きていたことになります。キャラクターを殺した相手は、特に理由がない限りはこの死にぞこないを、死んだものと思い込みその場に捨て置いて立ち去ります。なんとか生き残ったキャラクターは暫くして耐久点が1点の状態で意識を取り戻します。

 活劇点の獲得

ゲームを通してあらゆる局面で行われた行為判定のサイコロの目が6のぞろ目だった場合はそのキャラクターは直ちに活劇点を1点得ることが出来ます。行為判定では通常はサイコロを三つ振りますが、そのうち二つが6のぞろ目であるときに活劇点を獲得します。サイコロは2つ振る行為判定ではその両方が6の目であるときに活劇点を1点獲得します。
 役格が主役のキャラクターの場合は5のぞろ目のときでも活劇点をえることが出来ます。主役が振ったサイコロの目が5、5、6といった場合には、活劇点を1点獲得し、行為判定のサイコロの目としては5+6=11を使います。

 主役と活劇点

 前述のごとく主役は活劇点の獲得に際してかなりの有利がありますがその代わりに特別な使用制限もあります。
 まず第一に主役キャラクターたるものはゲームマスターの許可なしに利己的な目的に活劇点を使用してはいけません。(たとえば活劇点を使って富くじで大もうけするなど)またゲームマスターが必要と認め指示したならば主役らしく振舞うために活劇点を消費しなければなりません。この消費は強制されるもので断ることはできません。(たとえば主役のキャラクターが深酒をして二日酔いの判定をしなくてはいけなかったとします。ゲームマスター曰く『一流の剣客ともあろうものがあれしきの酒で二日酔いになるわけがない。活劇点2点を消費して成功したことにしてください』というふうな具合です)
 一度のセッションが終われば活劇点は自動的に開始時の値に戻ります。ただし、1つのシナリオがセッションを越えて続いている場合は、開始時の値よりもたくさんの活劇点を持っている場合に限り、それを保有し続けられます。言い換えれば、シナリオがまだ継続する場合は、次のセッション時に初期活劇点(活劇点蓄積限度-2)よりも小さい場合に限っては、開始時の活劇点まで自動的に回復するということです。
 シナリオが終了すれば、どれだけ活劇点を持っていようと、自動的に初期活劇点に戻ります。

 【戦闘】

時代劇のクライマックスシーンというものは大抵の場合がテンポの良い剣劇シーンになります。以下に述べる戦闘ルールはこの剣劇の雰囲気をそのまま伝えるべく考案されたものです。

 戦闘ラウンド

 剣劇シーンは基本的にすべて戦闘ラウンドという時間単位で行います。1戦闘ラウンドは実時間の約3秒間に匹敵します。そしてこの中で各キャラクターは何らかの行動を行っていくのです。この行動の順序はキャラクターの役格によって決定します。主役がまず行動し、続いて準主役、脇役の順に行動します。同じ役格の場合はプレイヤーキャラクターが先に行動し、つづいてNPCが行動します。また同じ役格でPC同士などの場合は『技』の能力値が高いほうが先に行動します。それも同じならば『心』の高いほうが先に行動します。『技』も『心』も同じ場合はサイコロを振って順番を決めます。キャラクターが自身の行動を起こす時期のことをそのキャラクターの行動手番と呼びます。

 行動手番

各キャラクターは1回の戦闘ラウンドに次のことができます。

  • 6間(約10メートル)までの移動
  • 1回の攻撃
  • 1回の受けもしくは体さばき

 つまり各キャラクターは3秒間(1戦闘ラウンド)に移動して1回の攻撃と防御ができるわけです。このうち、移動と攻撃は自身の行動手番の時に行います。受けもしくは体さばきは敵の攻撃手番の攻撃に対する防御として行います。自身の行動手番におこなう移動と攻撃に関しては順序はどちらが先になってもかまいません。活劇点を1点消費して余分な行動を行う場合も組み合わせは自由です。例えば追加で活劇点を2点使用した場合などは、6間移動→攻撃→6間移動→攻撃でも良いし、6間移動→6間移動→攻撃→攻撃などでもかまいません。唯一の制限は6間の移動をして使用することはできないということです。6間移動→攻撃→3間移動→攻撃→3間移動の様に合計の移動距離が12間だとしても、移動を3分割する場合はさらに活劇点が必要です。
 また、攻撃と移動以外の行為に関してはゲームマスターの判断にゆだねられますが、通常は移動か攻撃のどちらかの代わりに何らかの行動を行うか、移動の一部として(6間の移動の量を調整して)行動することになります。

デザイナーのコメント
たとえば、障子を開けて室内に入るという行動を行うときは障子を開けるのが2間の移動に匹敵するとして、残りの移動できる距離を4間にするというように移動に付随する行為は移動距離の削減か、移動のまったくの代替として行動するのがふさわしいし、何らかの道具をつかったり物を探したりといった、意識の集中を必要とするものは攻撃の代替とするのがわかりやすいかもしれません。

 攻撃の方法

 移動することによって敵と決まった間合いに入ることのできたキャラクターは攻撃を行うことができます。もしくは移動せずとも既に間合いに入っているキャラクターはその敵を攻撃することができます。攻撃を進んで行うことができるのは自分の行動手番のときだけです。ただし、敵の攻撃に対する反撃という形ならば敵の手番であっても攻撃できます。
 間合いはキャラクターの使用している武器によって定められています。この範囲に敵が入っているときだけ攻撃を行うことができます。

デザイナーのコメント
 もし剣劇シーンを遊ぶときにヘクスマップやスクエアマップを使用するときは、1マスの大きさを1間(約1.8メートル)とするのが適当でしょう。こうすると1マスの広さは1坪(畳で2畳)になります。1マス1間にしておけば、時代劇の一番一般的な武器である大刀や脇差の攻撃できる範囲が隣接マスのみということになります。また、短刀や十手、それに素手での攻撃といったように間合いが半間の場合は同じマスに敵がいるときに間合いに入っていることになります。各種の武器の間合いについては表-7「武器一覧表」に記載されています。

 さて、敵を自身の間合いにとらえることができたならば、いよいよ実際の攻撃になります。攻撃を解決するためには以下の手順を取ります。

1 攻撃と反撃の宣言

 攻撃を行うキャラクターはその攻撃の対象を宣言し、攻撃を宣言された側は反撃を宣言することができます。攻撃を受けた側が反撃を宣言するためには、この戦闘ラウンドでまだ攻撃を行っていないか、もしくは活劇点を消費して追加の攻撃を買う必要があります。攻撃を受けた側が反撃を行わない場合は受けのみを行います。

2 命中判定

 攻撃を宣言した側は命中判定のための技能ロールを行います。技能ロールの難易度は相手の回避値(「体さばき」技能実効値+5)です。攻撃を受けた側も、反撃を行うことを先に宣言していた場合は、命中判定の技能ロールを行います。こちらも難易度は相手の回避値(「体さばき」技能実効値+5)です。
 攻撃に対する反撃がある場合は、命中判定の達成値(技能実効値+サイコロの目の合計)の大きな方の攻撃が先に命中します。大きな達成値の攻撃を完全に解決した後で相手の攻撃は解決されます。(大きな達成値の攻撃の一撃で切り殺されてしまえば、もう反撃はできないことになります。)
 命中判定の難易度の「体さばき」+5に届かなかった攻撃は、外れたことになります。また、「体さばき」を持っていない者が攻撃を受けた場合は、『技』の能力値+5が攻撃の難易度になります。

3 受け判定

 攻撃が命中することとなった場合、相手は受け流しを試みることができます。ただし、受け流しを試みることができるのは、まだこの戦闘ラウンドに受け流しを行っていないか、活劇点を1点使用して追加の行動を買った場合のみです。
 もし、受け流しが行えないか、行わないならば相手の攻撃は命中したことになり、4 打撃判定に進みます。
 受け流しを行う場合は受けに使う武器の技能ロールを行います。受け流しの難易度は相手の攻撃の達成値になります。これに成功すれば相手の攻撃は受け流したことになります。
 受け流しの代わりに「体さばき」で攻撃を避けることもできます。その場合は「体さばき」の技能ロールを行います。

4 打撃判定

 命中判定に成功し、攻撃を受けた側が受けたり体さばきで回避したりに失敗したか、あるいはそれらをまったく行わなかった場合は、打撃判定で実際のダメージを決定します。打撃判定は攻撃に使われた武器によって決まっている打撃力のサイコロを振って行います。各武器の打撃力については表-7「武器一覧表」に記載されています。打撃力は基本的にサイコロ1つといくつかのの修正で構成されています。また武器によっては修正の無いものもあります。とにかく敵への攻撃が命中したならばサイコロを振って与えたダメージを決定するのです。このときにふられたサイコロの目が修正せずに6で、使用している武器の致命の欄が有になっている場合は致命的命中が発生します。致命的命中が発生した場合は、直ちにもう一度サイコロを振って、その出目をダメージに加えます。この致命的命中の時に加えられるサイコロの目は武器の種類を問わずにサイコロの目そのままです。
 また、使用している武器の体修正の欄が有になっている武器での攻撃の際は表-8「追加打撃表」によって示されているだけの、余分なダメージを与えることができます。
 攻撃を受けた側が防具を身につけていた場合は、その防御点ぶんだけダメージが減少します。
 ダメージを受けたならばその分だけ耐久点が減少します。結果として耐久点がセロ以下になったキャラクターは死亡します。
 傷を負ったキャラクターがNPCの脇役の場合は、直ちに『心』の能力値判定を行います。難易度は10に受けたダメージを加えたもです。この判定に失敗した脇役NPCは苦痛にうずくまったり、泣き喚いたり、とにかく戦力としては無力化されます。足が使えるならば逃げ出す選択をするものが大半です。(NPCですからその行動はゲームマスターが決めます。)

 素手戦闘と特殊な戦闘

 素手での戦闘も基本的には刀などを用いた戦闘とルールは変わりません。ただ、素手戦闘は間合いが半間なので、マス目を使って戦闘する場合は同じマス目内で戦うことになります。

拳、蹴り

 素手での戦いの基本は相手を殴ったり、蹴ったりする打撃技です。これらの打撃技を行う場合は<拳法>技能ロールを行います。打撃技に関しましては、通常の武器を使った攻撃と同じように解決します。ただし、蹴りによる攻撃の場合は、相手の回避値に3が加えられます。
 また素手による打撃技が刀などの武器で受け流された場合は、逆に攻撃を行った側が受けに使われた武器の本来の打撃力の半分のダメージを受けます。これには「体」の能力値による修正はつきません。もしも、攻撃を受けた側が甲冑などの防具を身につけている場合は打撃力を半分にした後で甲冑の効果を適用します。

組みつき

 相手を格闘で捕まえ、組み付く攻撃です。組むだけでは相手にダメージを与えることは出来ませんが、その続きとして、投げたり、絞めたりすることによってダメージを与えることが出来ます。
 相手を組みとめるためには、<柔術>技能で相手の回避値+3以上を出さなくてはなりません。言い換えれば組み付きの難易度は回避値+3ということになります。
相手が、組まれるのを避けようとする場合は<柔術>、もしくは<体さばき>技能で攻撃側の<柔術>技能の達成値以上を出せば阻止することが出来ます。
(この組み付きへの抵抗は行動とは考えません。従って既に通常の<体さばき>による回避や<剣術>による受け流しを行っていても行うことが出来ます。また、この組みつきへの抵抗は<柔術>技能を持っている場合にのみ可能です。能力値だけでの抵抗は行えません。)

投げ

 素手戦闘の投げは相手を投げ飛ばして転倒させる攻撃ですが、これを行うためには先に相手に対して組み付いていなくてはなりません。投げは<柔術>技能の判定で対象の「体」+5以上をださなくてはなりません。投げられる側は<柔術>技能で投げる側の<柔術>の達成値以上をだせば、投げられることを防ぐことが出来ます。(この投げへの抵抗は行動とは考えません。従って既に通常の<体さばき>による回避や<剣術>による受け流しを行っていても行うことが出来ます。ただし<柔術>技能をもっている必要があります。能力値のみでの判定は行えません。)
 投げを行う際に、投げる相手が自分よりも十分に大きな体格をしている場合は、投げの成功のための目標値が上昇します。(体格差にあわせてゲームマスターが適宜に修正を決めてください。)この目標値の修正は相手の「体」+5の値に対しておこなわれます。

絞め、関節技

組み付きに成功している状態で、絞め技や間接技を行うことが出来ます。絞めは首などを絞めて相手を気絶、もしくは絶命させるものです。絞めによる攻撃を行う場合は、気絶させるのが目的か、殺すのが目的かを攻撃に先立って宣言します。気絶させる場合は相手の「体」の能力値+5を目標に<柔術>技能で判定を行います。この判定に2回連続で成功した場合、相手は2D6分間気絶します。殺すことを目的とした場合は4連続の行動で判定に成功しなくてはなりません。この4連続の<柔術>判定のうち達成値が5以上で成功することがあれば、その時点で頚椎を損傷し、相手は死亡します。

当身

 <柔術>技能や<拳法>技能を使って、相手を気絶させることが出来ます。これらの気絶を狙った攻撃を総称して当身と呼びます。当身は通常の攻撃と同じように解決しますが、通常のダメージは与えません。当身攻撃が成功したならば当身を受けた側は、「体」の能力値判定を行います。これに失敗すれば気絶します。「体」の能力値判定の目標値は、当身の攻撃の達成値になります。当身を受けて気絶している時間はおおよそ2D分間です。

峰打ち

刀の刃のない側(峰)を使って攻撃するのが峰打ちです。峰打ち攻撃では、自動的にあたえるダメージが半分になります。また致命がありの武器でも致命的命中は発生しません。峰打ちはダメージを加減した攻撃の総称ですので刃のない武器(たとえば六尺棒)でも行うことが出来ます。飛び道具では峰打ちは行えません。

表-7 武器一覧表

武器名
打撃力
体修正
致命
間合い
備考
大刀1D6+2
一間
脇差/小刀1D6+1
一間
短刀/匕首1D6
半間
十手1D6
半間
手槍1D6+1
二間
薙刀1D6+3
二間
※1
六尺棒1D6
二間
棒手裏剣1D6-1
半間
※2
小柄1d6-2
半間
※2
1d6-2
半間
※3
蹴り1s6-1
半間
※3
組むなし
半間
※4
投げ1d6
組み
※5
※1 薙刀の攻撃を体さばきでかわす場合は、体さばきの難易度が-2されます。
※2 これらは基本的に投げて使用する武器ですが、この表のデータは手に持って使う場合です。
※3 打撃にはさらに「拳法」技能レベルの半分(端数切捨て)が加えられます。
※4 相手に組み付くためにはこちらの「柔術」技能と相手の「体さばき」技能で対抗ロールを行います。
※5 既に組み付いていなければ投げることはできません。

表-8 追加打撃表

『体』の能力値
追加打撃
4または5
なし
6または7
+1
8または9
+2
10
+3
※ 武器一覧表で体修正の項目が有になっている武器で攻撃を行う場合はこの表の追加打撃が適用されます。

 飛び道具

 今までの戦闘に関するルールは刀や素手で戦うためのルールでしたが、次に飛び道具を使った攻撃について説明します。
 飛び道具の範疇にはいるのは弓や鉄砲のほかに投げて使用する手裏剣や小柄などです。
 飛び道具の攻撃にの攻撃の場合は命中判定の難易度は目標までの距離で決まります。それぞれの飛び道具には射程が決まっていますので(表-9「飛び道具一覧表」を参照)この射程までの距離を近間と呼びます。命中判定の難易度は15です。射程以上、射程の2倍までの距離が遠間で、命中判定の難易度は20になります。もちろんゲームマスターはこれらの難易度を様々な理由で修正してもかまいません。たとえば動いている目標を狙う際は難易度は3くらい上がるでしょうし、自分も動いている場合はさらに5くらい上がるかもしれません。標的が小さかったり、半分隠れている場合も難易度は上がります。逆に、よく狙って打つと難易度が下がるかもしれません。かわりにその戦闘ラウンドには移動を行えなくなります。
 鉄砲以外の飛び道具は受けを行うこともできます。
遠間から攻撃された飛び道具を受け流す場合の難易度は20になります。近間からの飛び道具の攻撃を受け流す難易度は25になります。飛び道具の攻撃を受けるためには攻撃されていることに気づいている必要があります。
 体さばきにによって攻撃を受け流すことも可能で、その難易度は受け流すときと同じです。
 また、飛び道具による攻撃は打撃判定時に遠間からの攻撃の場合はダメージが1点小さくなります。また 遠間 からの攻撃に関しては防具の防御店を2倍にしてダメージを計算します。ただし、打撃判定の結果が致命的命中(サイコロの目が6)の場合は、防具の隙間に当たったとして防御効果はまったくなくなります。
 飛び道具には、通常の刀剣とによる攻撃とはまったく違う部分があります。それは一度攻撃したならば、もう一度、弾や矢を準備しなくてはいけないというところです。そして、これは通常の攻撃や移動のように行動の1つとして考えます。手裏剣や小柄は1回の攻撃もしくは移動の代わりとして準備することができます。矢は2回の攻撃や移動の代わりとして準備できます。つまり1戦闘ラウンド攻撃も移動も行わなければ矢は準備できるということです。もちろん活劇点が十分にあればそれで行動を買って矢を準備することもできます。
 鉄砲の場合は再装填にまるまる10戦闘ラウンドが必要です。そのあいだ一切他の行動を行うこともできません。ただし、活劇点を消費した場合に限って、移動や「体さばき」による防御を行うことができます。

表-9 飛び道具一覧表

武器名
打撃力
体修正
致命
射程
備考
大弓
1D6+1
12間
半弓
1D6
10間
棒手裏剣
1D6-2
3間
十字手裏剣
1D6-1
2間

 甲冑

 このゲーム「八百八町浮世草子』の舞台は江戸時代ですのであまり甲冑を着た侍が登場することは無いかもしれませんが、もしも必要になれば次のように扱います。
 本来甲冑には様々な様式があるのですが、このゲームでは具足と鎖帷子の二つだけを扱うことにします。具足というのは戦国時代に侍たちが着用していた、いわゆる鎧兜の総称ということでこのゲームでは扱います。当世具足、腹巻、胴丸、大鎧などのすべての型式の鎧を含んで具足とします。また鎖帷子は鎖を縫いこんだ鎧下や陣羽織のようなものです。映画の忠臣蔵などでは、討ち入りを行う浪士たちが着込んだりしています。こういった甲冑の効果はゲーム上では受けるダメージを軽減します。具足は4点ダメージを減少させます。鎖帷子の場合は2点です。ただし打撃判定のサイコロの目が6で致命的命中になった場合は、甲冑は防御効果を発揮しません。
 また、甲冑を身につけると幾分からだの動きが阻害されます。具足を身につけたキャラクターは「技」の能力値が2下がったものとして行為判定を行わなくてはなりません。これは「技」を基本とする技能ロールにも影響を与えます。鎖帷子を身につけたキャラクターは「技」の低下は1だけです。

 その他の行動

剣劇場面になって攻撃や受け、移動のほかに様々な行動が行われるでしょう。それらのうちの代表的なものについて説明します。

抜刀する

敵を攻撃するためには武器が準備されたいなくてはなりません。刀は抜かれていなければいけませんし、手裏剣も懐から出されていなくてはなりません。こららの行為のは1回の攻撃か3間の移動のかわりにおこなうことができます。つまり抜刀する戦闘ラウンドの手番行動では6間の移動+抜刀か3間の移動+抜刀+攻撃のいずれかを行えることになります。

叫ぶ

一言か二言叫ぶぐらいならば特に行動と考える必要はありません。ゲームマスターは常識の範囲で頃を認めてよいでしょう。

伏せるまたは立ち上がる

何かから隠れるために伏せたり、逆に伏せてる状態や転倒している状態から立ち上がることは1回の行動と考えます。これらの行動は攻撃か移動のかわりに行えます。
 伏せている目標に対する飛び道具の攻撃は難易度が+3されます。

しゃがむ

伏せるまでいかなくとも単にしゃがむこともあるでしょう。しゃがむ行為は移動の一環として考え、3間の移動に匹敵するものとします。
 しゃがんでいる目標に対する飛び道具の攻撃では難易度が+2されます。

乗馬戦闘

乗馬状態での戦闘ではいくつかの修正があります。

  • 乗馬の相手に対して攻撃を行う場合、武器の間合いが半間の場合は、攻撃を命中させる難易度が+5されます。武器の間合いが1間の場合は+2です。2間以上の間合いの武器を使う場合は難易度の修正はありません。
  • 乗馬状態の相手に対して攻撃を行う場合、間合いが半間の武器による攻撃では与えるダメージが半分になります。1間の武器の場合はダメージが1減少します。

 【負傷】

 戦闘の結果などでキャラクターが負傷した場合は、回復させないとならないでしょう。
 受けた負傷は手当てをして1日を過ごすごとに回復の可能性があります。負傷が回復するかどうかは「耐久点」判定で解決します。10に受けた負傷を加えたものを難易度として「耐久点」で判定を行い、これに成功したならば耐久点は1点回復します。失敗したならばその日は回復しません。もしこの判定に5以上の差で失敗したならばさらに耐久点を1点失います。負傷の回復や悪化は直ちに耐久点に反映させます。負傷の回復の判定に用いる耐久点は、ダメージを受けて減少する前のもともとの値です。
 「医術」技能を持っているものが看護した場合は回復判定の難易度から「医術」の技能レベルを差し引くことができます。
 回復判定は、朝キャラクターが起床した時点で行います。

 手当て

 負傷を回復するためにはまずは手当てを行わなくてはなりません。これは「医術」の技能ロールで行います。難易度は回復判定と同じように10に受けているダメージを加えたものになります。これに成功すれば、翌日か回復の判定が普通に行えます。これに失敗した場合は翌日からの回復判定の難易度が+3されます。
 負傷を受けた当日以降も回復していくためにはほぼ毎日手当てを行わなくてはなりませんが、これには技能ロールによる判定は必要ありません。手当てをする道具と環境がそろっていれば良いこととします。また、この毎日の手当てに有効な医薬が使われるならば、その医薬の能力に応じて回復判定の難易度に修正を行ってください。一般的な外相用の軟膏の場合は回復判定の難易度を2下げることができます。

 重傷(選択ルール)

ただの一撃でもともとの耐久点の半分以上のダメージを受けた場合は重傷を負ったものとします。もしも重傷を負ったならば半時(1時間)以内に手当てを行って成功しなければさらに1点、余分に耐久点を失います。これは手当てに成功するまで続きます。(1時間に1点、耐久点を失います。)

 【睡眠 食事 疲労】

キャラクターは一日に最低4時間は眠らなくてはなりません。つまり20時間以上連続で起きていることはできません。もしどうしても起きているならば『心』の能力値ロールを行わなくてはなりません。この難易度は10に余分に起きていなくてはならない時間を加えたものになります。この判定に失敗したならばキャラクターは眠りに落ちてしまいます。また、この判定は連続して起きている1時間ごとに行わなくてはなりません。つまり、21時間目が目標値11、22時間目が目標値12という具合です。こうして無理をして起きているキャラクターの行う行為判定は自動的に難易度が1高くなります。また、前日に十分な睡眠(4時間以上)を取れなかった場合にも行為の難易度は+1されます。これらの修正は加算されますので前日は4時間未満の睡眠で、なおかつ20時間以上起きているキャラクターの行為判定では難易度がすべて+2されることになります。
 また、キャラクターは一日に2回の食事を摂らなくてはなりません。規定の食事が二日以上連続で取れなかった場合は、やはり行為判定の難易度が+1されます。また、まったく食事を摂らない日が二日以上続いた場合は、二日ごとに耐久点が1点ずつ減少していきます。この減少は負傷ではないので手当ての必要はありませんが、これによって耐久点がゼロになったならばそのキャラクターは身動きできなくなります。この状態のまま3日放置されると、そのキャラクターは死亡します。食事だけでなく、水分もまったく取れない場合は耐久点の減少は1日ごとに2点になります。食事や水分が取れない飢餓状態での耐久点の減少は負傷のように耐久点ロールでは回復しません。ただ食事をすればよいだけです。食事を摂れるようになると、1日に1点の割合で耐久点は自動的に回復します。
 長時間の運動や労働による疲労もキャラクターに悪影響を及ぼします。たとえば長時間走ったり、急峻な山道を登ったりした場合は、キャラクターは肉体的な疲労状態に置かれます。疲労状態のキャラクターも行為判定の難易度が+1されます。疲労状態は十分な睡眠をとることによって翌日には回復します。

 【NPC】

プレイヤーが演じるキャラクター以外の登場人物はすべてゲームマスターが演じます。これらのキャラクターはノンプレイヤーキャラクター(NPC)と呼ばれます。以下にNPC専用のルールを説明します。

 NPCの役格

NPCも役格をやはり持っていますがプレイヤーキャラクターの三つの役格にくわえて雑魚という役格があります。雑魚とは最も下の役格で行動手番はいつも最後になります。また、攻撃を受けても反撃することも、武器で受け流すことも、「体さばき」で攻撃を回避することもできません。

 NPCの活劇点

NPCも活劇点を利用できますが、自動的に行為判定を成功させることには使用できません。
 また、NPCが登場するときに持っている活劇点は以下のようになります。

  • 主役 1D6
  • 準主役 1D6-2
  • 脇役 1d6-4
  • 雑魚 活劇点なし

 またNPCは最初に持っている活劇点を使うだけで例え行為判定で6のゾロ目が出てもプレイヤーキャラクターのように活劇点を新たに得ることはありません。
 ただし、プレイヤーの直接の仲間のNPCはこの限りではありません。

 【江戸の度量衡】

このゲームの舞台となるのは江戸時代の日本です。江戸時代の日本については様々な資料が出版されていますので、ここでは簡単に江戸時代の通貨と度量衡について記載していきます。

 江戸時代の通貨

江戸時代には基本的に三通りの通過が使用されていました。金貨と銀貨と銭貨です。中で、庶民に最も親しまれていたのが銭貨です。これはいわゆる一文銭で、貨幣の最低単位になります。
 次に金貨ですが、金貨には幾つかの種類があります。最も高額なのが十両の大判ですが、これはほとんど実用に使われることはありませんでした。今で言う記念硬貨のようなものだったのでしょう。そして小判です。時代劇の悪役たちは大抵が、この山吹色の輝きが大好きです。小判1枚は一両で、幕府の公定ではこれは四千文に相当します。
 小判の四分の一の価値を持つのが一分です。一分には金貨である一分金と銀貨である一分銀がありました。従って一分は一千文ということになります。なお一千文のことを別に一貫文とも呼びます。
 一分のさらに四分の一を一朱と呼びます。これにも一朱金と一朱銀があります。
 以上の金貨、銀貨、銭貨は全て計数貨幣といい、その枚数だけで直ちに額面が決定されます。(小判10枚=十両)つまり普通のお金です。これに対して銀貨には秤量貨幣と呼ばれる重さを量って使われる貨幣があります。
 これは丁銀や豆板銀と呼ばれるもので、一枚いくらというのではなく、使用するたびに秤で重さを量りました。これは主に上方の商人が使いましたので、時代劇にはあまり登場しないかもしれません。銀は公定では重さ六十匁が一両に匹敵しました。実際には、この違う貨幣同士の兌換率は時代が移るごとに変動しましたが、ゲーム上では幕府の公定、一両=銀六十匁でよいでしょう。

 尺貫法

長さと重さの単位も江戸時代と現代では違います。江戸時代には尺貫法が使用されていました。その単位は概ね次のようになっています。

長さ

  • 一里=三十六町=約3.93km
  • 一町=六十間=約109m
  • 一間=六尺=約1.82m
  • 一尺=十寸=約30.3cm
  • 一寸=約3.03cm

重さ

  • 一貫=千匁=約3.7kg
  • 一斤=百六十匁=600g
  • 一匁=3.75g

 時刻

時刻の表し方も江戸時代と現代では大きく違います。現代では一日を24時間に等分しますが、江戸時代には日の出と日の入りの間を夜と昼とでそれぞれ六等分しました。合計で一日は十二に分かれるのですが、春分と秋分の日以外の日は夜の一刻と昼の一刻では長さが違います。そしてまた実際の呼び方がややこしいのですがまず、真夜中の日付が変わる時を夜九ツといいます。それから夜八ツ、暁七ツ、明け六ツ、朝五ツ、昼四ツ、そして正午は昼九ツ。それから昼八ツ、夕七ツ、暮れ六ツ、宵五ツ、夜四ツとなります。時間の呼び方がこう不自然なのは易学の影響によるものです。また、時刻のもう1つの呼び方として、十二支を時刻に当てはめる方法もあります。その場合は真夜中が子の刻になります。十二支が順に並び、夜明けが卯の刻、正午が午の刻、日の入りが酉の刻となります。

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